耳面刀自




磐余の池で処刑された大津皇子が最期に見たのは
なんだったのか。池の鴨などであったとは思えない。
自分を陥れた者の顔を、あるいは面影を見たのでは
ないだろうか。

民俗学の金字塔と言われた折口信夫氏は、その著書
「死者の書」の中で、自らの処刑を見物に来た者達
の中に、一人の女性を皇子に見せている。

その女性とは、耳面刀自(みみものとじ)。
大友皇子の妃の一人で藤原鎌足の娘である。

そして、処刑と共に何も見えなくなった大津皇子が
目を覚ましたのは自らの墓の中。
ジメジメと暗い墓の中で少しずついろいろな事を
思い出していく。最期に見た耳面刀自の事も。

そしてそののち代々の藤原氏の一の姫の前に、阿弥陀
如来の姿で現れる。

このロマンホラーさながらのストーリーで、折口氏が
言いたいのは、大津皇子の処刑に不比等が関わっている
ということだ。皇子の処刑後、不比等は31歳で判事
として歴史上に登場する。
何をして一気に出世したのか、それは時の天皇・持統に
とっては喜ばしい何かをしたからなのだ。

本当に不比等は大津皇子を罠にかけたのだろうか。
そうだとしたら、なんと恐ろしい男だろうか。

(C) 2009 藤原不比等の歴史|藤原不比等の人物像